採用サイト制作の失敗|典型7パターンと発注前の回避策

採用サイト制作の失敗の原因を発注前・契約時・制作中・公開後の4つの段階に整理したQ&A型図解。失敗の大半は発注前と契約前の確認で防げることを示す。

採用サイト制作の失敗は、デザインや技術の問題よりも、発注側の進め方に原因があるケースがほとんどです。典型は、目的・ターゲットを決めずに作り始める、価格と見た目だけで制作会社を選ぶ、権利や解約条件を確認せずに契約する、会社が言いたいことだけを載せる、流入経路を設計しない、公開後に放置される、といった7つのパターンに整理でき、その多くは発注前と契約前の確認で回避できます。

「せっかく費用をかけて採用ホームページを作ったのに、応募がまったく増えない」

採用ホームページの制作をめぐる失敗談は、金額の大小を問わず後を絶ちません。しかも厄介なことに、失敗の芽の多くは制作が始まる前、つまり発注と契約の段階ですでに埋まっています。なお、「採用サイト」と「採用ホームページ」は同じものを指しますが、本記事では以降「採用ホームページ」に統一します。

この記事では、採用ホームページ制作の失敗を「発注前・契約段階・制作中・公開後」の4つの段階に分け、典型7パターンとその回避策を解説します。公的機関が注意喚起している契約トラブルの事案も取り上げます。当メディアの調査・編集方針は調査概要・評価基準で公開しています。

深澤 里奈深澤 里奈

年間30社以上のデジタルツール選定を支援していると、「前の採用ホームページで失敗したので相談したい」というご依頼が本当に多いんです。お話を伺うと、失敗の原因はデザインの良し悪しではなく、作り始める前の決め事が抜けていたケースがほとんど。つまり、パターンを知っていれば防げた失敗ばかりなんですよね。この記事では、私が実際に相談を受けてきた典型パターンを段階別に整理しました。

採用ホームページ制作の失敗|結論はこの6行

  • 失敗の典型は7パターン。発注前・契約段階・制作中・公開後の4つの段階に分けて整理できます。
  • 発注前の失敗は「目的・ターゲットの未設定」と「価格と見た目だけの会社選び」の2つが典型です。
  • 契約段階では、著作権・データの帰属と、中途解約の条件の確認漏れが後戻りできないトラブルになります。
  • リース型の契約は原則中途解約ができず、公的機関が事業者向けに注意喚起を出しています。
  • 公開後の失敗は「流入経路がない」「更新されず放置」の2つ。制作と同時に運用の設計が必要です。
  • 失敗の根本原因をたどると、制作前の「採用設計」の不在に行き着きます。
採用サイト制作の失敗|典型7パターン早見表
段階失敗パターン回避の要点
発注前1. 目的・ターゲットを決めずに作り始める誰に・何を伝えるかを発注前に言語化する
2. 価格と見た目だけで制作会社を選ぶ評価軸をそろえて複数社を比較する
契約段階3. 著作権・データの帰属を確認せず契約する権利・名義・納品範囲を契約書で確認する
4. 解約条件を確認せず長期契約を結ぶ契約形態と中途解約の条件を事前確認する
制作中5. 会社が言いたいことだけを載せる候補者が知りたい情報から構成を決める
公開後6. 流入経路を設計していない求人媒体・検索などの導線を制作時に設計する
7. 更新されないまま放置される更新の担当と頻度を公開前に決めておく

採用サイト制作の失敗とは|典型7パターン

採用サイト(採用ホームページ)制作の失敗とは、費用と時間をかけて作ったにもかかわらず、応募や採用成果につながらない状態を指します。その原因は、目的・ターゲットの未設定、会社選びの基準不足、契約条件の確認漏れ、企業目線のコンテンツ、流入経路の欠如、公開後の放置といった典型7パターンに整理できます。

重要なのは、7パターンのうち多くが「制作会社の技術力」とは関係のない、発注側の進め方の問題だという点です。同じ制作会社に依頼しても、発注の準備と契約の確認ができている企業とできていない企業では、結果が大きく分かれます。

POINT

失敗は「発注前」「契約段階」「制作中」「公開後」の4つの段階で起きます。自社がいまどの段階にいるかを意識しながら読むと、確認すべきポイントが明確になります。

ここからは、段階別に7パターンの中身と回避策を見ていきます。


発注前の失敗|目的とターゲットが曖昧なまま走り出す

発注前の失敗は、「目的・ターゲットを決めずに作り始める」と「価格と見た目だけで制作会社を選ぶ」の2つが典型です。この段階の失敗は、その後の契約・制作・公開のすべてに波及するため、7パターンのなかでも影響がもっとも大きい失敗といえます。

1目的・ターゲットを決めずに作り始める

「他社も持っているから」「今のページが古いから」という理由だけで制作を始めると、誰に何を伝えるページなのかが決まらないまま、デザインの話が先行します。ターゲットが曖昧な採用ホームページは、新卒にも中途にも刺さらない総花的な内容になりがちで、制作途中の方針変更による追加費用の原因にもなります。発注前に「どの職種の、どんな人に、何を伝えて応募してもらうか」を一文で言えるようにしておくことが出発点です。

2制作会社を価格と見た目の印象だけで選ぶ

制作実績のデザインが気に入った、見積もりが一番安かった、という基準だけで依頼先を決めると、自社の目的とのミスマッチが起こりやすくなります。採用ホームページの制作会社は、低価格で早く作れる会社、取材・原稿まで任せられる会社、求人検索エンジンとの連携に強い会社など、得意分野がはっきり分かれているためです。対応範囲・更新のしやすさ・サポート体制といった評価軸をそろえて複数社を比較することが、ミスマッチ回避の基本です。

会社ごとの得意分野をそろえて比較したい方は、別記事「採用ホームページ制作会社の比較|主要8社を6項目で客観評価」で主要8社を横並びで評価しています。目的別にどんな依頼先が向いているかは「採用サイト制作のおすすめ|目的別の選び方」で整理しています。


契約段階の失敗|権利と解約条件の確認漏れ

契約段階の失敗は、「著作権・データの帰属を確認しない」と「解約条件を確認せずに長期契約を結ぶ」の2つが典型です。この段階の失敗は契約書で確定してしまうため、後から気づいても取り返しがつきにくいのが特徴です。

3著作権・データの帰属を確認せずに契約する

制作費を支払っても、採用ホームページの著作権が当然に自社のものになるわけではありません。著作権は原則として制作した側に帰属し、発注側に移転させるには契約での取り決めが必要です。写真・原稿・デザインデータを自社がどこまで利用できるか、ドメインとサーバーが誰の名義でどちらが管理するかを確認しないまま契約すると、リニューアルや制作会社の変更のときに、写真や原稿を使い回せない、ドメインを持ち出せないといった問題が表面化します。

4解約条件を確認せずに長期契約・リース型契約を結ぶ

「月額数万円で作れます」という提案でも、その契約が月額利用型のサービス契約なのか、信販会社やリース会社を介した長期契約なのかで、途中でやめられるかどうかがまったく違います。とくにリース型の契約は原則として中途解約ができないため、制作会社と連絡が取れなくなっても支払いだけが残る事態が起こり得ます。契約期間・中途解約の条件・支払先がどこかを、署名の前に必ず確認しましょう。

こうした契約形態をめぐるトラブルは、実際に国の注意喚起の対象になっています。当メディアでは、解説の裏づけとして公的機関の公表資料を独自に確認のうえ引用しています。

公的機関の注意喚起

ホームページ関連の「リース契約」は原則中途解約ができない

経済産業省・中小企業庁(2011年9月公表)

何が問題になったか

「ホームページを作ります」という勧誘で契約したところ、契約の実体はホームページ作成という役務ではなく、ソフトなどの物件のリース契約だったという小規模事業者のトラブル。ホームページ作成などのサービスはリース契約の対象にならないため、サービス部分は販売会社との別契約となり、制作が滞っても長期のリース料支払いが残ります。

機関が示した内容

経済産業省・中小企業庁は、リース契約が原則として中途解約できないこと、ホームページ作成などの役務はリースの対象とならないことを示し、契約書の内容・支払総額・サービスの提供者を契約前によく確認するよう事業者向けに注意喚起しています。

この記事の読者への教訓

採用ホームページでも、月額型の提案を受けたときは「利用契約か、リース・信販契約か」という契約形態と中途解約の条件を、金額より先に確認することが重要です。支払先が制作会社ではない契約は、とくに慎重な確認が必要です。

出典

経済産業省・中小企業庁「ホームページソフトなどのリース契約はしっかり考えてから」(2011年9月公表)|一次資料(経済産業省・PDF)

なお、正当な見積もりであっても、要件の固め方や「一式」表記の扱い方しだいで費用が想定より膨らむことがあります。費用が膨らむ典型構造と見積書のチェックリストは、別記事「採用サイト制作の費用相場|4つの価格帯と見積もりチェックの要点」で詳しく解説しています。


制作中の失敗|会社が言いたいことだけを載せてしまう

制作中の失敗の典型は、コンテンツが「会社が言いたいこと」に偏り、「候補者が知りたいこと」が抜け落ちるパターンです。社長メッセージと企業理念が最上部に大きく並び、肝心の仕事内容・待遇・職場の雰囲気が薄い採用ホームページは、この失敗の典型例です。

5会社が言いたいことだけを載せてしまう

候補者が採用ホームページで確かめたいのは、「どんな人と、どんな環境で、どんな仕事をするのか」という働く実感です。ところが制作の現場では、社内の各部署の要望を汲むうちに、理念・沿革・製品紹介といった企業目線の情報が積み上がりがちです。原稿を制作会社に丸投げしたり、逆に社内の意向だけで書いたりせず、「候補者が応募前に知りたい順」で構成を決めることが、この失敗の回避策になります。

林田 結衣林田 結衣

監修の林田です。求人原稿の設計を専門にする立場から補足すると、応募が集まらない採用ホームページの原稿には共通点があります。それは、どの会社にも当てはまる言葉だけで書かれていることです。「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」だけでは、候補者は自分がそこで働く姿を想像できません。社員の具体的なエピソードや1日の流れなど、その会社でしか書けない情報こそが応募の決め手になりますよ。


公開後の失敗|導線がない・更新されない

公開後の失敗は、「流入経路を設計していない」と「更新されないまま放置される」の2つが典型です。採用ホームページは公開がゴールではなくスタートですが、制作の予算と労力を公開までに使い切ってしまい、公開後の運用が計画に入っていないケースが少なくありません。

6公開後の流入経路を設計していない

採用ホームページは、公開しただけで候補者が見に来てくれるものではありません。社名で検索してもらえる知名度がない限り、求人媒体・求人検索エンジン・SNS・社員紹介など、候補者がページにたどり着く経路をセットで設計する必要があります。求人広告と連動させて応募直結の1ページを作る場合は、複数ページの採用ホームページではなく採用LPという選択肢もあります。採用LPの制作サービスは別記事「採用LP制作のおすすめ・比較|主要5社を6項目で客観評価」で比較しています。

7更新されないまま放置される

募集が終わった職種が載ったまま、社員紹介が数年前のまま、という採用ホームページは、候補者に「管理が行き届いていない会社」という逆効果の印象を与えます。更新が止まる原因の多くは、担当者と更新手段が公開前に決まっていないことです。誰が・何を・どのくらいの頻度で更新するのか、自社で更新できるCMSにするのか制作会社に依頼するのかを、制作の要件段階で決めておきましょう。


失敗を防ぐ発注前チェックリスト

7つの失敗パターンは、発注前と契約前の確認でその大半を防げます。制作会社に問い合わせる前と、契約書に署名する前の2つのタイミングで、次の項目を確認しましょう。

  • 目的の言語化:どの職種の、どんな人に、何を伝えて応募してもらうかを一文で言えるか
  • 会社選びの軸:価格・見た目以外の評価軸(対応範囲・更新性・連携・サポート)で複数社を比較したか
  • 権利の帰属:写真・原稿・デザインデータの著作権と利用範囲が契約書に明記されているか
  • 名義と管理:ドメイン・サーバーの名義と管理権限がどちらにあるか確認したか
  • 契約形態:月額型の場合、利用契約かリース・信販契約か、中途解約の条件と支払先を確認したか
  • コンテンツ方針:候補者が知りたい情報から構成を決める方針を制作会社と共有したか
  • 流入と運用:公開後の流入経路と、更新の担当・頻度・手段を決めたか
深澤 里奈深澤 里奈

失敗の相談を受けたとき、私が最初に確認するのもこのチェックリストの項目です。とくに権利の帰属と契約形態は、契約後では打てる手が限られてしまうので、署名前の確認がすべてなんです。逆に言えば、ここさえ押さえておけば、多少の行き違いがあっても軌道修正できます。制作会社に質問して嫌がられることはまずありませんから、遠慮せず聞いてくださいね。


失敗の根本原因は「採用設計」の不在

7つの失敗パターンをさかのぼると、多くは共通の根本原因に行き着きます。それは、制作前に「誰に・何を・どう伝えるか」を定める採用設計の不在です。目的が曖昧なのも、会社選びの軸がないのも、コンテンツが企業目線に偏るのも、採用設計が固まっていないことの表れといえます。

裏を返せば、採用設計が固まっている企業は、この記事の7パターンの多くを自然に回避できます。ターゲットが明確なら制作会社への要望も具体的になり、伝えるべきことが決まっていればコンテンツの取捨選択にも迷いません。採用ホームページ制作の成否は、制作が始まる前におおむね決まっているのです。

応募が集まる採用ホームページの前提となる「採用設計」の考え方と進め方は、別記事で詳しく解説しています。

採用設計から見直す方法を見る

よくある質問

Q採用サイトの制作でよくある失敗は何ですか?

採用サイト(採用ホームページ)制作でよくある失敗は、目的・ターゲットを決めずに作り始める、制作会社を価格と見た目だけで選ぶ、著作権・データの帰属を確認せずに契約する、解約条件を確認せずに長期契約を結ぶ、会社が言いたいことだけを載せる、流入経路を設計しない、公開後に放置される、の7パターンに整理できます。多くは制作技術ではなく発注側の進め方に原因があり、発注前と契約前の確認で回避できます。

Q採用ホームページの制作会社選びで失敗しないためにはどうすればいいですか?

価格やデザインの印象だけでなく、自社の目的に合う制作会社かどうかを確認することが重要です。対応範囲・料金・更新のしやすさ・求人検索エンジン連携・サポート体制などの評価軸をそろえて複数社を比較し、見積もりの前提条件を文書で確認しましょう。低価格で早く作れる会社、取材・原稿まで任せられる会社など得意分野が分かれているため、目的との照合が失敗回避の鍵になります。

Q制作会社との契約前に確認すべきことは何ですか?

契約前には、写真・原稿・デザインデータの著作権と利用範囲、ドメイン・サーバーの名義と管理権限、契約期間と中途解約の条件、月額型の場合の契約形態(利用契約かリース・信販契約か)、納品物の範囲を確認します。とくにリース型の契約は原則として中途解約ができないため、公的機関も事業者向けに注意喚起を出しています。支払先が制作会社ではない契約は慎重に確認しましょう。

Q採用ホームページを作ったのに応募が来ないのはなぜですか?

主な原因は、採用ホームページへの流入経路が設計されていないことと、誰に何を伝えるかという採用設計が制作前に固まっていないことの2つです。採用ホームページは公開しただけでは見てもらえないため、求人媒体・求人検索エンジン・SNSなどからの導線設計と、ターゲット候補者に合わせたコンテンツ設計の両方が必要です。

Q失敗した採用ホームページは作り直すべきですか?

すぐに作り直すのではなく、まず失敗の原因がどの段階にあるかを切り分けることをおすすめします。流入経路の不足や更新の停滞が原因なら、既存サイトの運用改善で立て直せる場合があります。一方、ターゲット設定やコンテンツの方向性など採用設計レベルのズレが原因の場合は、設計を固め直したうえでリニューアルを検討するのが着実です。


まとめ

採用ホームページ制作の失敗は、目的・ターゲットの未設定、価格と見た目だけの会社選び、著作権・データの帰属の確認漏れ、解約条件の確認漏れ、企業目線のコンテンツ、流入経路の欠如、公開後の放置という典型7パターンに整理できます。いずれも「発注前・契約段階・制作中・公開後」のどこかの段階で防げる失敗です。

なかでも影響が大きいのは、発注前と契約段階の失敗です。目的の言語化と評価軸をそろえた会社比較、そして権利の帰属・契約形態・中途解約条件の契約前確認ができていれば、失敗の大半は入口で回避できます。

そして、7パターンの根本には採用設計の不在があります。制作の検討と並行して、「誰に・何を・どう伝えるか」を固めるところから始めましょう。採用設計の進め方は「成果が出る採用サイトは採用設計で決まる」で、依頼先となる制作会社の比較は「採用ホームページ制作会社の比較|主要8社を6項目で客観評価」で解説しています。


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